省エネのためにエネルギー消費を制御するなど多彩な機能を持ちます

スマートグリッドの中で重要な役割を担っているのが「スマートメーター」です。これはどの家庭にもある備え付けられている電力計の次世代版です。従来は専門の検針員が一軒一軒世帯を訪問して屋外に取り付けられている電力計の数字を記録し、それに基づいて電力力金が計算されていましたが、スマートメーターはネットワークで電力会社に接続されているため、人力に頼ることなく遠隔での検針が可能になります。

米国ではプライバシーの侵害などの訴えも

何らかの理由で電力料金を支払わない世帯への電力遮断も自動でできるようになります。海外では電力料金を払わずに盗電する人が多いところもあり、それらの国ではスマートメーターを導入すれば自動的にコンピューターが発見してくれます。

また各家庭の電力消費情報をリアルタイムで送信するだけでなく、電力会社がその情報を元に電力の制御を行なうこともできます。アメリカを例に挙げると、電気料金が時間帯によって異なりますので、料金の高い時間帯にはレンジやドライヤーなどを使って余分な電力を消費しないなど、電力消費を制御するという需要があります。

日本の場合、契約内容によって料金が変動することがありますが、電力消費の多い時間帯の電気料金を高く設定し消費を控えてもらい、そうでない時間帯の価格設定を低くするなどして電気料金を安くするということが可能になります。

スマートメーターを設置した世帯は屋内に設置されたモニター、あるいは電力会社のウェブサイトにアクセスすることで「自分はどの時間帯にどれくらいの電力を消費しているのか」、「どのような省エネが有効なのか」を把握することができます。また「これからの時間帯は電気料金があがりますよ」というメッセージを受けることも可能です。そのため電気代を節約したい世帯や企業、無駄な電力消費を減らすことで環境に貢献したいい人にもメリットがあります。

このシステムは電力会社とっても大きなメリットがあります。というのも電気は蓄積することができませんから、電力会社は電力の消費ピークの時間帯には燃料コストの高いピーク電源を利用して自前で発電するか、卸売市場で高い値段がついている電力を買うなどして家庭や企業の電力需要に応えなければなりません。

電力会社にとってのこのコストや投資負担は非常に大きいため、仮にピークの電力消費を安定して抑えることができれば、会社の収益にもプラスになるのです。ピークの電力消費削減を、その時間帯の値段を上げることにより、またそうでない時間帯を下げることによって、家庭や企業の電力消費動向を変えようというわけです。

アメリカで行われたスマートメーター導入の実証試験では、約70%の人がスマートメーターの情報を元に自分のこれまでの電力消費パターンを改善し、電気料金を下げることに成功したと回答しています。

アメリカではオバマ政権がスマートグリッドプロジェクトに総額34億ドルの助成金を交付したため、現在では2000万台を超えるスマートメーターが設定されています。これと相まって、電気料金の節減効果を狙って、スマートメーターの信号を受信して消費の制御ができる洗濯機や乾燥機、冷蔵庫なども登場していますが、普及にはまだ時間がかかると思われます。

しかし、スマートメーターの導入に問題がないわけではありません。プライバシーの権利に敏感なアメリカかでは、消費者の行動を記録するスマートメーターに対して「プライバシーの侵害である」、「悪用される心配がある」といった意見、「電波で健康を害した」などの理由で反対、設置拒否運動が一部で上がっています。健康被害に関しては訴訟で「健康に影響を与えるものではない」という公式の見解が示されました。

また導入時の思惑とは逆に「スマートメーター」を利用したら電気代が前よりも高くなったとして、スマートメーターを巡る集団訴訟も起きました。実際はその年の夏の異常な暑さでエアコンの使用頻度が高まったことが原因とわかり事態は鎮静に向かいましたが、一時はスマートメーターの導入に暗雲が立ち込めたほどです。

日本はスマートメーターの導入に関する動きはどうなっているのでしょうか?政府は2011年夏にスマートメーターを全国規模で設置することを発表しましたが、先の原発事故の影響で収益面で苦労している電力会社はスマートメーターに資金を回す余裕がないとして、その普及は後退している感があります。一般家庭全部にメーターを設置すると、数千億円の費用が大きな負担になっているのです。